森 重文
院長 / 特別教授
研究分野
代数幾何学、双有理幾何学
研究概要
森博士が研究するのは代数幾何学の中の双有理分類論という分野における3次元の分類問題です。代数幾何学というのは、「代数多様体」と呼ばれる図形を扱う学問です。それらの図形のうちで、2次元以上の代数多様体は一つの図形が少しずつ違った形をして現れることがあります。乱暴な例えですが、図形をどこかにぶつけて、部分的な凹みや尖りができたりといった感じと言えば良いでしょう。この些細な違いを無視して代数多様体を分類しよう、というのが双有理分類論です。ほとんどの曲面は、幾つかの曲線をつぶすように図形を小さくする操作を行うと極小モデルと呼ばれる曲面にすることができ、些細な違いがなくなるということがわかっており、この操作を極小モデルプログラム(MMP)といいます。
長い間、3次元以上への極小モデルの一般化は困難でしたが、[2]で端射線理論を導入し大局的視点を与えたことで、3次元MMP の発展の大きなきっかけとなりました。その後、MMP は整備され、大きな意味での3次元双有理分類論は、フリップと呼ばれる操作の存在が関連していることが発見されました。そして[3] で3次元フリップの存在を証明したことで、3次元MMP は解決し、3次元双有理分類論も粗い意味で完成しました。その後、多くの人びとの寄与により、現在では4次元以上についてもMMP は実用的な形で整備されています。
略歴
1973年 | 京都大学 理学部 卒業 |
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1975年 | 京都大学 大学院理学研究科 修士課程修了 |
1978年 | 理学博士(京都大学) |
1975-1980年 | 京都大学 理学部 助手 |
1980-1982年 | 名古屋大学 理学部 講師 |
1982-1987年 | 名古屋大学 理学部 助教授 |
1988-1990年 | 名古屋大学 理学部 教授 |
1990-2016年 | 京都大学 数理解析研究所 教授 |
2011-2014年 | 京都大学 数理解析研究所 所長 |
2016年- | 京都大学 高等研究院 院長・特別教授 |
主要論文
- S. Mori, Projective manifolds with ample tangent bundles, Ann. Math. 110, 593–606 (1979).
- S. Mori, Threefolds whose canonical bundles are not numerically effective, Ann. Math. 116, 133–176 (1982).
- S. Mori, Flip theorem and the existence of minimal models for 3-folds, J. Amer. Math. Soc.1, 117–253 (1988).
- J. Kollar, S. Mori, Classification of three dimensional flips, J. Amer. Math. Soc. 5, 533–703 (1992); Erratum 20, 269–271 (2007).
- S. Mori, Y. Prokhorov, On Q-conic bundles, Publ. Res. Inst. Math. Sci. 44, 315–369 (2008).
主な受賞等
日本数学会彌永賞(1983年)、日本数学会賞秋季賞(1988年)、井上学術賞(1989年)、アメリカ数学会コール賞(1990年)、日本学士院賞(1990年)、フィールズ賞(1990年)、文化功労者(1990年)、米国芸術科学アカデミー外国人名誉会員(1992年)、日本学士院会員(1998年)、トリノ大学名誉博士号(2002年)、藤原賞(2004年)、名古屋大学特別教授(2010年)、国際数学連合総裁(2015-2018年)、ロシア科学アカデミー外国人会員(2016年)、米国科学アカデミー外国人会員(2017年)、英国ウォーリック大学名誉博士号(2017年)、日本数学会賞小平邦彦賞(2019年)、京都府文化賞特別功労賞(2020年)、文化勲章(2021年)、トリノ科学アカデミー外国人会員(2023年)、ロンドン数学会名誉会員(2024年)