柏原 正樹
特定教授
研究分野
数学、代数解析、表現論
研究概要
柏原博士の数学における業績は、超局所解析、表現論、組み合わせ論、ホモロジー代数、シンプレクティック幾何、可積分系など多岐にわたります。そのなかでもよく知られているのは、D加群の理論の建設と結晶基底理論の創始です。1960 年代に佐藤幹夫博士によって導入された代数解析は、線形偏微分方程式を微分作用素の環D上の加群として捉え、環、加群、層、圏などの代数的道具を駆使して解析する分野です。佐藤博士のこの思想は、柏原博士によって発展され、現代数学のいろいろな分野の数学の基礎となっています。さらに、Schapira 氏とともに開発した層の超局所解析によって、これはさらに内容の深いものとなっています。また、同氏のリーマン・ヒルベルト予想の解決は特筆すべき業績です。曲線上に与えられたモノドロミーを持つ微分方程式が存在するかというのはヒルベルトの第21問題ですが、これを最も一般な形で定式化し証明したものです。さらに、これはカジュダン-リュスティッヒ予想と呼ばれる表現論の問題の解決で決定的な役割を果たしました。
略歴
1971年 | 東京大学 大学院理学系研究科 修士課程修了 |
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1971–1974年 | 京都大学 数理解析研究所 助手 |
1974–1977年 | 名古屋大学 理学部 助教授 |
1974年 | 京都大学 理学博士 |
1977–1978年 | マサチューセッツ工科大学 数学科 客員研究員 |
1978–1984年 | 京都大学 数理解析研究所 助教授 |
1984–2010年 | 京都大学 数理解析研究所 教授 |
2001–2003年 | 京都大学 数理解析研究所 所長 |
2007–2009年 | 京都大学 数理解析研究所 所長 |
2010年– | 京都大学 数理解析研究所 特任教授 |
2019年– | 京都大学 高等研究院 特定教授 |
主な受賞等
日本数学会彌永賞(1981年)、朝日賞(1988年)、日本学士院賞(1988年)、日本学士院会員(2007年)、藤原賞(2008年)、チャーン賞(2018年)、京都賞(2018年)、瑞宝重光章(2020年)、Frontiers of Science Award (2023年)、京都府文化賞特別功労賞(2024年)